- 換気が足りないと脳機能・睡眠にどれくらいの影響がある?
- なぜ換気が脳機能・睡眠に影響するのか
厚生労働省は30分に1回のペースで数分間の換気を推奨(※1)しています。
が、ほとんどの人は「空気がよどんできたな」と思った時くらいしか換気をしません。しかし換気不足だと、気づかないうちにあなたの脳機能・睡眠の質は下がっています…
そこで今回は、2つの研究をもとに換気が
- 脳の認知機能
- 睡眠の質
にどれくらい影響を与えるのかを具体的に解説。
ふだんの生活でこまめに換気をするだけで、脳機能・睡眠の質を手軽に上げられます!
手っとり早く効率的な換気の方法を知りたい方は、以下の記事が参考になります。
» 正しい部屋の換気方法!汚れた空気や二酸化炭素を効率的に入れ替えるには?
換気量を2倍にすると認知機能が101%上がる
2016年の研究(※2)で、オフィスの換気量を増やすと認知機能が大幅に上がることが判明しました。研究内容は以下のとおり。
- 参加者は24人の知識労働者(デザイナーや建築士など)
- 参加者は6日間、研究のために用意した実験室で仕事をした
- 実験室の環境は日によって以下の3パターンに変化
- 通常環境:空気中の化学物質・換気量が一般オフィスと同程度
- グリーン環境:空気中の化学物質量が1の10%程度
- グリーンプラス環境:2の条件に加え、換気量が1の2倍
- 毎日15時に9つの認知領域(意思決定や集中力、情報収集力など)のテストを実施
結果、通常環境と比べて9つの認知テストの平均スコアは
- グリーン環境が+61%
- グリーンプラス環境が+101%
有意に高かったのです。
有意:結果が偶然による誤差ではなく、統計的に意味があること
また、この研究で認知テストの結果の81%を決めたのは、
- 空気中の化学物質量
- 換気量
- CO2(二酸化炭素)濃度
の3つでした。その他の要因(食事や睡眠の質、気分など)が認知機能に与える影響は19%だったそうです。
特にCO2濃度の影響は大きく、CO2が400ppm増加するごとに、9つの認知テストの平均スコアが21%下がりました。
換気の良い部屋は睡眠の質が上がる
2015年の研究(※3)で、寝室を換気すると睡眠の質が上がることが実証されました。研究内容は以下のとおり。
- 参加者は30人の男女学生
- 参加者は窓を10cm開けた部屋と閉めた部屋で1週間ずつ寝た
- 窓を開けた部屋は、CO2濃度が900ppmを超えると窓際の扇風機が自動作動
- 毎日の睡眠の質をスマートウォッチで測定
- 毎朝睡眠の質を評価するアンケート調査を行い、論理的思考力のテストを実施
結果として、窓を開けて寝ると閉めた場合に比べて有意に
- 睡眠効率(ベッドにいる時間のうち、眠っている時間の割合)が高い
- 主観的にもよく眠れた
- 翌日の気分も良い
ということがわかりました。ただし論理的思考力には、換気による有意差がありませんでした。
換気が脳機能・睡眠に影響する3つの理由
換気が脳のパフォーマンス・睡眠の質に影響する理由は3つあります。
- CO2(二酸化炭素)濃度が下がる
- 空気中の汚れを除去できる
- 湿度を適正に保つ
順に解説します。
CO2(二酸化炭素)濃度が下がる
先ほど紹介した換気と脳機能に関する研究でも、睡眠に関する研究でも、結果に大きな影響を与えた要因はCO2濃度です。
建築基準法では建物内のCO2濃度は1,000ppm以下と定められています。つまりCO2濃度の人体への影響がそれだけ大きいということ。
換気をしなければ室内のCO2濃度はどんどん上昇し、脳のパフォーマンスや睡眠の質が下がります。
6畳の部屋に人ひとりの場合、CO2濃度が28分で倍増
窓を閉めた部屋でどのくらいCO2濃度が上がるのかを実験してみました。実験方法は以下のとおり。
- 広さ約6畳の部屋↑で2時間窓を開けておき、CO2濃度を最低レベルまで下げる
- 窓と扉を閉め、人ひとりがいる状態でCO2濃度の上がり方を測定
CO2濃度を測るのに使ったのは、以下の高精度CO2測定器
15時39分、実験スタート。開始時のCO2濃度は453ppmです↓。部屋にはぼく1人で、ふだんと同じようにパソコン作業をしながら過ごしました。
16時7分(実験開始から28分後)、CO2濃度が1,000ppmを超えました↓。
そこから部屋の向かい合った2つの窓を開き、CO2濃度が1,000ppmを下回ったのは16時10分(窓を開けて3分後)です↓。
先ほど紹介した換気と認知機能の研究では、CO2濃度が400ppm上がるごとに認知テストのスコアが平均21%下がりました。
なので脳機能を下げないために、少なくとも30分に1回、3分以上の換気が必要そうですね。
空気中の汚れを除去できる
換気が脳機能・睡眠に影響する理由の2つめは、
- ホコリ
- ダニの死骸
などの空気中の汚れを取り除けるため。
人は空気が汚れていると本能的に呼吸が浅くなります。浅い呼吸で取り込む酸素量が減った結果、脳機能・睡眠の質低下につながるのです。
湿度を適正に保つ
湿度は、
- 高すぎればカビやダニの原因
- 低すぎれば乾燥
につながります。カビやダニは当然有害ですし、乾燥すれば目や鼻、口、のどの調子が悪くなって集中・快眠はさまたげられるでしょう。
換気には適切な湿度を保つ役割もあります。
こまめな部屋の換気で、脳機能・睡眠の質を上げよう
換気の脳機能・睡眠への影響をまとめます。
- 換気量を2倍にすると認知機能が101%上がる
- 換気の良い部屋は睡眠の質が上がる
- 換気が脳機能・睡眠に影響する理由はCO2濃度、空気の汚れ、湿度が関係している
今までなんとなく空気がよどんだときだけ換気していた方は、換気の重要性を再確認できたのではないでしょうか。
よりこまめに空気を入れ替えるだけで、脳機能・睡眠の質が大幅UPしますよ。
そして換気のときに、
- より短時間で
- できるだけ多くの空気を入れ替える
方法は以下の記事で解説しています。参考にしてみてください。
» 正しい部屋の換気方法!汚れた空気や二酸化炭素を効率的に入れ替えるには?