- 腸内環境が脳に与える具体的な影響が知りたい!
- 脳腸相関って何?
- なぜ腸内環境が脳に作用する?
脳と腸の関係は近年研究され始めたばかりです。なので、最新の知識を整理して発信している情報は多くありません。
そこで今回は、2022年時点の最新情報(論文30本以上)を調べ、科学的に判明している腸が脳に与える影響をわかりやすくまとめました。
腸内環境を改善して脳機能UPさせたくなること間違いなしの内容です。
研究が示した腸内細菌の知能・ストレス・メンタルへの影響
研究が示した腸内細菌が脳に与える影響を3つ紹介します。
- 多様な腸内細菌がいる人ほど頭が良い
- 腸内環境改善でストレスが減り、ポジティブになる
- 腸内細菌が人間の性格を左右する可能性がある
前提:腸内細菌と脳の関係は近年注目され始めたばかり。そのため大規模、長期間の信頼性が高い研究はあまりないのが現状です
多様な腸内細菌がいる人ほど頭が良い
2022年の研究(※1)で、腸内細菌の種類が多い人ほど頭が良い傾向があると示されました。研究内容は以下のとおり。
- 参加者は48 〜60歳の男女597人
- 参加者に6つの認知テスト(情報処理能力、言語記憶力、注意力、言葉をうまく使う能力、社会生活・職業能力、認知症レベル)を実施し、腸内細菌との関係を分析
結果、腸内細菌の多様性が高いほど、5つの認知テスト(言葉をうまく使う能力以外)の成績が有意に良いことがわかりました。
有意:結果が偶然による誤差ではなく、統計的に意味があること
また28〜97歳の男女184人が対象の2021年の研究(※2)でも、多様な腸内細菌を持つ人ほど有意に知能が高い傾向が示されています。
さらに2016年の研究(※3)では、プロバイオティクス(乳酸菌などの腸内細菌そのもの)の摂取で認知症患者の認知機能が大幅に改善しました。具体的な研究内容は以下。
- 参加者は60〜95歳の認知症患者60人
- 参加者をランダムに2群に分ける
- プロバイオティクス群(乳酸菌・ビフィズス菌配合牛乳)
- 対照群(ふつうの牛乳)
- 自群の牛乳を毎日200ml、12週間飲んでもらう
- 研究開始・終了時の認知テストの結果を分析
結果、対照群の認知テスト成績は5.03%落ち、プロバイオティクス群は27.9%有意に上がったのです。
腸活にオススメのプロバイオティクスは以下の記事で解説しています。
(後日公開予定)
腸内環境改善でストレスが減り、ポジティブになる
2014年の研究(※4)では、プレバイオティクス(食物繊維などの腸内細菌のエサ)摂取とストレスの関係を調べました。研究内容は以下のとおり。
- 参加者は18〜45歳の男女45人
- 参加者を3群にわける
- プレバイオティクス群(フラクトオリゴ糖)
- プレバイオティクス群(ガラクトオリゴ糖)
- 対照群(ブドウ糖)
- 参加者は3週間、自群のプレバイオティクスを朝食時に5.5gとる
- 研究開始・終了日の起床後15分ごとのコルチゾール(ストレスホルモン)濃度を測定
- 研究終了日にポジティブ・ネガティブな言葉への反応の速さ(=反応しやすさ)もテスト
結果、ガラクトオリゴ糖群は対照群に比べて有意にコルチゾール濃度が低くなりました。
またガラクトオリゴ糖群は対照群に比べて有意にポジティブな言葉に反応しやすく、ネガティブな言葉に反応しにくくもなりました。
オリゴ糖をはじめとする、腸活にオススメのプレバイオティクスは以下の記事で解説しています。
(後日公開予定)
腸内細菌が人間の性格を左右する可能性がある
2020年の研究(※5)によれば、どの腸内細菌が人間のどんな性格と関係するのかまでわかってきています。
研究の参加者は18歳以上の成人男女655人。参加者のビッグ5と腸内細菌それぞれの個体数の関係を分析しました。
結果、以下の7種の腸内細菌の数が、外交性・神経症的傾向と有意に相関していました。
細菌名 | 影響した性格 | 相関 |
---|---|---|
ラクトコッカス | 外交性 | 正 |
アッカーマンシア | 外交性 | 正 |
オシロスピラ | 外交性 | 正 |
デスルフォビブリオ | 外交性 | 負 |
サテレラ | 外交性 | 負 |
レンサ球菌 | 神経症的傾向 | 負 |
コリネバクテリウム | 神経症的傾向 | 負 |
上記7種の細菌の発生源と、どんな作用を持つのかは以下にまとめています。
脳腸相関(脳と腸はお互い影響し合っている)
緊張するとお腹が痛くなったり、逆に腸内環境が悪化するとうつ病になったり。脳と腸がお互いに影響し合うことを脳腸相関と言います。
腸がここまでに書いたような影響を脳に与えるのも脳腸相関によるもの。脳腸相関と関係する体のしくみは以下の2つです。
- 迷走神経を通して腸は脳に作用する
- 腸内細菌がさまざまな神経伝達物質(セロトニンなど)をつくって脳に影響
それぞれ詳しく説明します。
迷走神経を通して腸は脳に作用する
2012年のレビュー論文(※13)によれば、腸が脳におよぼす影響のほとんどは迷走神経が関係するそうです。
迷走神経とは脳と腸、そして全身につながる神経。複雑な経路で体中を通っているので「迷走」という名前がついています。
迷走神経はリラックスと関係する副交感神経の1種で、
- 気管収縮
- 心拍数
- 腸の動き
など、体のさまざまな器官をコントロールしています。
迷走神経を通して腸から脳、そして全身へ指令が飛び、人の心と体にいろんな影響を与えるのです。
腸内細菌がさまざまな神経伝達物質(セロトニンなど)をつくって脳に影響
腸内細菌はさまざまな神経伝達物質をつくって脳に影響を与えています。
2014年のレビュー論文(※14)で、腸内細菌がつくる6つの神経伝達物質が紹介されています。
神経伝達物質 | 主な作用 |
---|---|
セロトニン | 幸福感、メラトニン(睡眠ホルモン)の材料 |
ドーパミン | 快感 |
ノルアドレナリン | 心拍数、血圧を上昇させてやる気UP |
GABA(ギャバ) | リラックスと関係する副交感神経活性化 |
アセチルコリン | GABAの調節や認知機能、注意力、集中力と関係 |
ヒスタミン | 睡眠・覚醒や学習記憶、食欲調節と関係 |
また別の研究によれば、人体の
が腸で作られると判明しています。
2015年の研究(※17)によると、腸は以下の2つの方法で幸福感に影響を与えるそうです。
- 腸のセロトニンが腸と脳をつなぐ迷走神経を刺激
- 迷走神経がセロトニンなどの神経伝達物質を出すよう脳に命令
- 脳から分泌された神経伝達物質で幸福感UP!
- 腸内細菌が食物繊維(野菜などが多く含む)を発酵させ、短鎖脂肪酸をつくる
- 短鎖脂肪酸は血管から脳へ
- 短鎖脂肪酸が脳を刺激してセロトニンの分泌をうながす
腸から脳が生まれたからこそ、深い関係がある
腸と脳の深い関係を説明するときによく言われるのが、「腸から脳が生まれた」という話です。実はこの話には2つの意味があります。
- 動物の進化で腸が先につくられ、腸が発達して脳が生まれた
- 胎児の脳は腸からできあがる
順に解説します。
動物の進化で腸が先につくられ、腸が発達して脳が生まれた
出典:腸にまつわる超すごい話
動物の進化の過程では腸が先につくられ、腸が発達して脳があとから生まれたそうです。
今から10億年前、全動物の起源である腔腸(こうちょう)動物が誕生しました。腔腸動物の体は、
- 栄養をとり込む口
- 栄養を吸収する腸
- 便を出す肛門
だけを持つシンプルな構造。
その腔腸動物が昆虫や鳥類、哺乳類などへ進化するときに腸の背面に脊髄が発達し、その先端がふくらんで脳になったというのが現在の有力な学説です。
その証拠にクラゲのような脳がない生物はいますが、腸がない生物は存在しません。
胎児の脳は腸からできあがる
「腸は脳から生まれた」の2つ目の意味は。人間の胎児で腸が先に完成し、脳があとからつくられることを指します。
受精卵が胎児の体に変化するときに、まずつくられるのが腸。そして腸から胃や食道などの消化器官を形づくり、消化器官ができた先で形成されるのが脳なのです。
脳に大きな影響を与える腸内環境を改善しよう
今回の内容をまとめます。
- 多様な腸内細菌がいる人ほど頭が良い
- 腸内環境改善でストレスが減り、ポジティブになる
- 腸内細菌が人間の性格を左右する可能性がある
- 迷走神経を通して腸は脳に作用する
- 腸内細菌がさまざまな神経伝達物質をつくって脳に影響を与える
- 動物の進化でも人間の誕生でも、腸から脳が生まれた
この記事で、脳にとって腸内環境がいかに重要かが伝わったと思います。
そんな人の頭を支配していると言っても過言ではない腸内環境の改善方法は、以下の記事で解説しています。
(後日公開予定)