- 腸内環境の改善で本当に痩せるの?
- 腸活がなぜダイエットに有効?
- 太っている人の腸内環境はどうなっている?
WHOの2021年レポートによれば、今や世界人口の51%が肥満。世の中には多くのダイエット法がありますが、スリムな体型を維持し続けられる人は少ないです。
そこで今回は、腸内環境とダイエットの関係を
- 腸内環境改善がダイエットに有効だと実証した3つの研究事例
- 腸内細菌が肥満と関係する3つの理由
- 太っている人の腸内細菌の2つの特徴
の順番で解説。
食事制限・運動をしても効果が出ない、リバウンドしてしまうといったダイエット失敗を避けるためにも、腸内環境と肥満の正しい知識を身につけておきましょう。
腸内環境の肥満への影響を調べた3つの研究
腸内環境によって太りやすさが変化すると実証した研究を3つ紹介します。
- プロバイオティクス(善玉菌)摂取で肥満が改善するとメタ分析で実証
- 肥満女性がプロバイオティクスを3ヶ月摂取して体重 – 4.4kg
- 肥満の人の腸内細菌を移植したマウスが太った
メタ分析:同じテーマの複数研究を統計的に分析する信頼性の高い研究方法
順に解説します。
プロバイオティクス(善玉菌)摂取で肥満が改善するとメタ分析で実証
プロバイオティクスに関する過去15件の研究を対象にした2017年のメタ分析(※1)で、善玉菌が肥満を改善すると実証されました。
メタ分析の対象になった15件の研究内容は以下のとおり。
- 各研究の参加者は21〜139人
- プロバイオティクス摂取期間は3〜12週間
- 5件が肥満者のみを対象にし、10件が健常者も含む
メタ分析の結果は、プロバイオティクスをとった人はとっていない人に比べて有意に、
- 体重 – 0.6kg
- 体脂肪率 -0.6%
というものでした。
有意:結果が偶然による誤差ではなく、統計的に意味があること
プロバイオティクス摂取で参加者の体重が劇的に減った研究も紹介します。
肥満女性がプロバイオティクスを3ヶ月摂取して体重 – 4.4kg
2014年の研究(※2)では、プロバイオティクスをとった肥満女性の体重が平均4.4kg減りました。研究内容は以下のとおり。
- 参加者は18〜55歳の肥満男女153人
- 期間は24週間
- 参加者をランダムにプロバイオティクス群、対照群(偽サプリ)にわける
- 参加者は毎日朝・夕食の30分前に自群サプリをとる
- 最初の12週間は食事制限、残り12週間は自由に食事をして体重などの生理指標を測定
結果は参加者のうち女性のみ有意に、
- 12週間経過時:プロバイオティクス群の体重 – 4.4kg、対照群 – 2.6kg
- 24週間経過時:プロバイオティクス群の体重 – 5.2kg、対照群 – 2.5kg
というものでした。
この研究では、プロバイオティクスをとった女性の腸内で特定の細菌群が大幅に減った一方、男性の腸内は変化しませんでした。
やはりプロバイオティクスの影響は個人差が大きいので、いろいろ試してみて自分に効果が出るプロバイオティクスを使うのが重要そうです。
ぼくが使っているプロバイオティクスは以下の記事で紹介しています。
(後日公開予定)
肥満の人の腸内細菌を移植したマウスが太った
2013年の研究(※3)で片方が太り、もう片方は痩せている4組の双子(複数年のBMI差が5.5以上)の腸内細菌をマウスに移植し、体格の変化を調べました。
結果、同じ食事をしているにもかかわらず、双子の太った方の細菌を移植したマウスは、痩せた方のマウスより有意に、
- 体重が増え
- 体脂肪も増え
- 体格も大きく
なったのです。さらに太った双子マウスを、腸内細菌を取り除いた無菌マウスと同居させると、無菌マウスも肥満になりました。
腸内細菌がダイエットに関係する3つの理由
腸内細菌によって太ったり痩せたりする理由は以下の3つです。
- 食欲をコントロールする
- 人が食事からとり込むカロリーの5〜10%は腸内細菌がつくる
- 脂肪の吸収をおさえる
順に説明します。
食欲をコントロールする
2021年の研究(※4)では、腸内細菌がつくる短鎖脂肪酸が食欲調節ホルモンPYYを分泌させ、食事量を減らすことがわかっています(マウス実験)。
また腸内細菌は脳と腸をつなぐ迷走神経を通じて脳に命令し、食欲に影響します。その証拠に肥満者31名の迷走神経を医療機器で遮断した2008年の研究(※5)では、6ヶ月で参加者の
- 体重が14.2%
- 摂取カロリーが30%以上
有意に減ったのです。
腸と脳の密接な関係は、以下の記事で詳しく解説しています。
» 腸内環境の脳への影響を科学的に解説!腸内細菌と知能・ストレス・メンタルの関係
人が食事からとり込むカロリーの5〜10%は腸内細菌がつくる
2020年のレビュー論文(※6)に、人体のカロリー吸収と腸内細菌の関係が書いてあります。
人が食事からとり込むカロリーのうち5〜10%をつくっているのが腸内細菌。この食事からカロリーをつくる腸内細菌が過剰に多くなると、カロリーが増えすぎて肥満になります。
脂肪の吸収をおさえる
2015年の研究(※7)では、乳酸菌の1種であるラクトバチルスが脂肪の吸収をおさえると判明しました。
研究内容は以下のとおり。
- 参加者は27〜69歳の健常者30人
- 期間は14日間
- 参加者をランダムにラクトバチルスを含む牛乳群、対照群(ただの牛乳)群に分ける
- 実験期間中、参加者全員にカロリーと脂肪量が同じ食事を提供
- 参加者は研究の8日目から毎日100ml自群の牛乳を摂取
- 5〜7日目、12〜14日目に便を採取し、含まれる脂肪量を測定
結果、ラクトバチルス群は対照群と比べて有意に便の脂肪量が増えたのです↓。
肥満の人の腸内環境の2つの特徴
どんな腸内環境の人が肥満になるのかも研究で明らかになっています。
- デブ菌が多く、ヤセ菌が少ない
- 腸内細菌の多様性が低い
順に説明します。
デブ菌が多く、ヤセ菌が少ない
腸内細菌に関する過去25件の研究を調べた2019年のメタ分析(※8)で、肥満の人の腸内環境の特徴が判明しました。
肥満の人はファーミキューテス門の細菌が多く、バクテロイデーテス門の細菌が少ないのです。
門:細菌のより大きな分類。たとえばビフィズス菌は「放線菌門 放線菌網 放線菌亜鋼 ビフィドバクテリウム目 ビフィドバクテリウム属」の細菌の総称
- ファーミキューテス門の細菌は、食事から多くのカロリーをつくるデブ菌
- バクテロイデーテス門の細菌は、食事からあまりカロリーをつくらないヤセ菌
と呼ばれます。
ファーミキューテス門の例は善玉菌である乳酸菌や納豆菌。バクテロイデーテス門の例は腸内の日和見菌(腸内細菌の70%を占め、善玉菌か悪玉菌の優勢な方に味方する菌)です。
腸内細菌の多様性が低い
先ほどの2019年のメタ分析(※8)で、肥満の人に当てはまったもう1つの特徴が「腸内細菌の多様性が低い」という点です。
腸内で特定の細菌の割合が増えると、その細菌が宿主に与える影響も大きくなります。
肥満の人の腸は食事からカロリーをつくったり、食欲を増やしたりする細菌ばかりになっているわけです。
腸内細菌の多様性を増やして痩せよう
今回の内容をまとめます。
- 腸内細菌が食欲をコントロールする
- 人が食事からとり込むカロリーの5〜10%は腸内細菌がつくる
- 腸内細菌が脂肪の吸収をおさえる
- 肥満の人はファーミキューテス門(デブ菌)が多く、バクテロイデーテス門(ヤセ菌)が少ない
- 肥満の人は腸内細菌の多様性が低い
ダイエットをする人、健康的な体型を維持したい人は、まず腸内環境の改善(細菌の多様性を増やすこと)からやってみてください。
意志力を使わずに自然と食事量をおさえられ、食べても太りにくい体が手に入りますよ。具体的な腸内環境の改善方法は以下の記事で解説しています。
(後日公開予定)