今回は厚生労働省や国立がん研究センターなどの公的機関データをもとに、
- 日本人はどんな病気で亡くなることが多いのか
- それぞれの病気の具体的な症状、原因
を解説します。
平均的な暮らしの日本人の将来を知れば、今から健康対策をする意識が高まるはず。生活改善のモチベーションが上がること間違いなしの内容なので、ぜひ読んでみてください(๑•̀ •́)و✧
日本人の死因ベスト3はがん、心臓病、老衰
↑のグラフは厚生労働省が発表する2020年の人口動態調査にのっている、日本人の死因の構成割合。用語の解説をすると
- 悪性新生物:がん
- 心疾患:心臓に起こる病気の総称(=心臓病)
- 脳血管疾患:脳の血管トラブルで起こる病気の総称(≒脳卒中)
となります。
正確には脳血管疾患と脳卒中は同じではありません。しかし脳血管疾患の大部分は脳卒中です。
以降の説明ではがん、心臓病、脳卒中の名前で統一します
日本人の死因割合を見ると、上位3つの死因で全体の半分以上だとわかりますね。2人に1人以上の日本人はがん、心臓病、老衰のいずれかで亡くなるのです。
日本人の死因第1位:がん
- 最近のがん死亡率の特徴
- 具体的な症状
- 主な原因
を解説します。
がんの死亡率は年々増加傾向
上記のグラフは主な死因の人口10万人あたり死亡率の推移です。赤丸のがんは右肩上がりで上昇していますね。医療は着実に進歩していても、まだ完治できる病気になっていないのが、がんの現状です。
がんは加齢で死亡リスクが上がるが、65歳前後から下がっていく
こちらは年齢別男女の死因構成割合。がんを示す水色の棒グラフの割合は25歳から少しずつ上昇し、男性は65〜69歳、女性は 55〜59歳でピークになります。ピークの年齢では死因のおよそ半分が、がんなのです。
一般的なイメージ通りですが、データ上もがんは加齢とともに死亡リスクが大きくなる病気だと示しています。
具体的ながんの症状
がんになっても必ず亡くなるわけではありません。もちろん治療での完治も可能です。
しかし意外と知られていないがんの症状は、抗がん剤治療以外でも生活の質を大きく下げます。
腫瘍がある部位の痛み
がんが進行すると、腫瘍がある部位の痛みが強くなっていきます。たとえば
- 脳腫瘍→頭痛
- 食道がん→飲み込むときの痛み
- 肺がん→息切れやせき
といった症状が起こるのです。
腫瘍が大きくなるにつれて他の組織が圧迫され、痛みにつながるんですね。
体重減少と疲労
症状の進行につれて体重が減ったり、疲れやすくなったりするのもがんの特徴の1つ。
食欲はあるのに体重が減る人もいれば、食欲がなくなり、食べ物によっては吐き気を感じたり飲みこむのが難しくなったりする人もいます。さらにがんが進むにつれて激しい疲労感を感じ場合もあるのです。
がんの主な原因は感染症、喫煙、飲酒
↑は国立がん研究センターが発表するがん発生原因を表したグラフです。
PAF:population attributable fraction(人口寄与割合)のこと。特定の要因にさらされなかった場合、病気の発症が何%減少するかを示す
男女総合のがん原因を見ると1位は感染症、2位は喫煙、3位は飲酒です。順に解説します。
感染症が直接・間接的にがんを引き起こす
がんの発症リスクを最も高めるのが感染症。
- ウイルス自体が直接がんの原因になるタンパク質を作る
- 感染に対抗するため体内で慢性炎症が起こり、細胞の死と再生が繰り返されて間接的にがんにつながる
上記のようなメカニズムで感染症によってがんを発症します。具体的ながん発症に関係するウイルスは以下。
ウイルス名 | がんの種類 |
---|---|
ヘリコバクター・ピロリ | 胃がん |
B型・C型肝炎ウイルス | 肝臓がん |
ヒトパピローマウイルス | 子宮頚がん、陰茎がん、外陰部がん、膣がん、肛門がん、口腔がん、中咽頭がん |
エプスタイン・バーウイルス | 上咽頭がん、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫 |
ヒトT細胞白血病ウイルスI型 | 成人T細胞白血病リンパ腫 |
喫煙は10種類のがん、その他12種類の病気の原因
たばこはがんの発症リスクを男性で30%、女性で5%高めます。男性では感染症よりもがんのリスクを高める原因なのです。たばこには約70種類の発がん物質が含まれ、がん自体を吸っていると言っても過言ではありません。
下の図は厚生労働省の「喫煙の健康影響に関する検討会(2016年)」で科学的に明らかならレベルで喫煙が原因になっていると報告された病気です。
たばこ1本で寿命が14分削られる、なんて言われるのもうなずける内容です。
ちなみにIQOS(アイコス)などの加熱式たばこにも発がん物質は含まれており、通常のタバコと比べてどの程度の健康被害があるのかは明らかになっていません。
飲酒は7種類のがんの原因
飲酒はがんの発症リスクを男性で9%、女性で2.5%高めます。WHO(世界保健機関)によると飲酒は口腔・咽頭・喉頭・食道・肝臓・大腸・乳がんの原因になるそう。
飲酒でがんになるのは
- お酒に含まれるアルコール
- アルコールが肝臓で分解されたアセトアルデヒド
の両方に発がん性があるためです。
また国立がん研究センターが40〜59歳の男女73,281千人を10年間調査した研究で、飲酒とがん発生率の関係を調査しました。
結果として、お酒をたまにしか飲まない人と比べて
- 週14合以上飲む人のがん発生率は40%
- 週16合以上飲む人のがん発生率は60%
高くなると判明しています。
お酒の種類ごとの1合(アルコール20g)の目安は↓。ロング缶でビールや缶チューハイを1日2本以上飲むと、がんのリスクが上がるということですね。
お酒の種類 | 1合分の量(ml) |
---|---|
ビール | 500 |
日本酒 | 180 |
焼酎 | 110 |
ウイスキー | 60 |
ワイン | 180 |
缶チューハイ | 500 |
日本人の死因第2位:心臓病
心臓病についても
- 死亡率の特徴
- 加齢による発症率の変化
- 主な原因
をみていきます。
心臓病の死亡率は年々増加傾向
↑の赤丸の心臓病死亡率も、がん同様に右肩上がりです。
1995年にガクンと死亡率が下がっていますが、これは統計調査の死因分類と死亡診断書のルールが改定されたため。医療の進歩で死亡割合が改善したのではなく、死因を心臓病とする基準が変わっただけです。
心臓病もがんと同じように、まだ死亡リスクの大きい病気なんですね。
心臓病は加齢で少しずつ死亡リスクが上がるが、特定の年齢からは横ばい
こちらは先ほども紹介した年齢別の男女の死因構成割合。濃い青の心臓病で亡くなる割合は男女ともに25歳から少しずつ上昇しています。ピークの年齢では男女ともに死因の20%が心臓病です。
心臓病の死亡リスクは男女とも25〜44歳くらいまで徐々に増え、それ以降はほぼ横ばい。女性のみ60歳から再び少しずつ心臓病で亡くなる割合が増えていきます。
心臓病の具体的な4つの症状
心臓病は心臓に関係する10種類の病気の総称です。ここでは主な心臓の病気に共通する4つの症状を解説します。
- 息切れや呼吸困難
- 胸の痛み
- 不自然な心臓のドキドキ
- 心臓麻痺(突然死)
具体的な症状を見ていきましょう。
息切れや呼吸困難
初期症状では階段をのぼる、荷物を持ち上げるなどのちょっとした動作ですぐに息が切れます。やがて病気が進行すると、横になった時や夜間に突然呼吸ができなくなるのです。
胸の痛み
心臓の血管が狭くなったり(狭心症)、つまったり(心筋梗塞)して心臓に充分な酸素や栄養が送れなくなり胸の痛みを感じます。
狭心症は激しい胸の痛みや圧迫感が15分程度、心筋梗塞は30分以上も続くのが特徴です。
不自然な心臓のドキドキ
特に緊張しているわけでもないのに突然鼓動が速くなったり、ドクンッと脈がいきなり大きくなったりします。
突然死(心臓麻痺)
心臓麻痺とは心臓の機能が停止し、生命を維持できなくなること。デスノートに名前をかかれた人が胸を押さえながら苦しみ、即死してしまうあれです。
心臓病の主な原因は健康に悪い生活習慣
心臓病の原因は血管を傷つけたり、心臓に負担をかけたりする動脈硬化、高血圧、高血糖です。
動脈硬化と高血圧が血管や心臓に悪いのはなんとなくわかりますね。弾力性を失った硬い血管や血管内部にかかる高い圧力は血管をボロボロにし、心臓を疲れさせます。
高血糖は血中で余ったブドウ糖が活性酸素を発生させ、血管にダメージを与えるのです。
動脈硬化、高血圧、高血糖につながる原因は以下。健康に悪いことはだいたい心臓病の原因でもあります。
- 肥満
- ストレス
- 喫煙
- 過剰な飲酒
- 糖質のとりすぎ
- トランス脂肪酸(加工食品に多く含まれる)
日本人の死因第3位:老衰
まず老衰の定義を確認しておきます。
老衰死とは脳や体の機能が少しずつおとろえ、最終的には生命活動を維持できなくなること。病気や事故のようなこれといった死因がない場合に老衰死と診断される
老衰についても死亡率の特徴や症状、原因をみていきましょう。
老衰の死亡率は年々増加傾向
↑の赤丸の老衰による死亡率も、がん・心臓病と同じように右肩上がり。しかも元々死因の3位、4位だった脳卒中と肺炎を抜いており、現在の日本人3大死因の中で最も伸び率が高いのが老衰です。
医療やテクノロジーの発達で他の病気・事故の割合が減っていけば、老衰で亡くなる人が今後も増えていくでしょう。
老衰は男性75歳、女性70歳から急激にリスクが上がる
白背景にてんてんのグラフが老衰で亡くなる割合です。男性は75歳、女性は65歳から老衰の比率が高まります。男女ともに95歳を超えると老衰死の割合が最も多くなっていますね。
老衰の介護が必要な期間はおよそ10年
老衰は握力・歩行速度の低下や転びやすくなるなど筋力の低下から始まります。同時に内臓もおとろえ、呼吸がうまくできなくなったり食事の栄養を吸収できず体重が急激に減少したりするのです。
さらに老衰が進むと食事を自分でとれなくなり、介護食での栄養補給が必要に。加えて脳機能の低下で意識がぼんやりして、やがて寝たきりの状態になります。
平均的な日本人の介護が必要な期間は約10年。なぜなら政府が発表する平成30年版高齢社会白書(概要版)によると、日本人の平均寿命(死ぬまでの期間)と健康寿命(介護なしで生活できる期間)の差は9.4年だからです。
老衰期間を決めるのは日々の生活習慣
老衰は加齢によるおとろえです。なので特定の原因はありません。ですが肥満や運動不足、歯のケアが足りていないなどの健康寿命を縮める生活習慣は老化を加速させ、介護が必要な期間を伸ばします。
健康な生活習慣は日本人の主な死因にも有効
飲酒や喫煙、ストレス、運動不足、肥満などは日本人の死因の共通した原因。当たり前すぎる結論ですが、不健康な生活習慣が病気を増やして健康寿命を縮めるのです。
逆にいえば主な死因に共通する体に悪い行動をさければ、病気を減らしていつまでも元気でいられます。
今後お菓子などの体に悪いものを食べたくなったとき、運動が面倒なときは「病気や介護をさけるためにはどうする?」と自問してください。
この記事の内容を思い出せば、きっと正しい選択ができます。すぐ目に見える違いは起きません。でも日々の積み重ねが、必ずあなたの人生を豊かでより良いものにしてくれるはずですよ。