魚が健康に良いとなんとなく知っていても、ふだんから意識的に魚を食べる人は少ないと思います。でもそれは健康的にかなりもったいない行為です…
今回は11個の研究をもとに、科学的根拠がある魚の健康メリットを7つ紹介します。
さらに、
- 魚と肉は科学的にどちらが健康に良いのか
- 魚の水銀で健康被害は起こらないのか
- フィッシュオイルサプリで魚のメリットを得られるのか
についても解説。この記事だけで魚の健康知識を幅広く理解できますよ。
日々の魚消費量が増え、健康度が上がること間違いなしの内容です!
研究で実証済の魚の健康効果7つ
さまざまな研究で実証されている魚の健康効果は以下の7つです。
- 脳が大きくなる
- 加齢の認知機能低下を遅らせる
- 心臓病、全死亡リスクを減らす
- 炎症をおさえて老化防止
- 脂肪が減り、筋肉が増える
- 睡眠の質が上がって日中元気になる
- 視力低下を防ぐ
順に解説します。
週1回以上の魚摂取で脳が大きくなる
2014年に発表された、魚の消費量と脳の体積の関係を調査した研究(※1)があります。研究内容は以下のとおり。
- 対象は65歳以上の健常者260人
- 参加者の9年間の魚消費量とMRIスキャンした脳構造のデータを分析
結果として週1回以上魚を食べる人はそうでない人に比べ、脳の
- 記憶エリアが4.3%
- 認知機能エリアが14%
大きくなっていました。
ぼくたちの脳全体の約60%は脂質。そしてこの脳の脂質の主な成分の1つが、魚に多く含まれるオメガ3です。
脳のオメガ3は加齢で減っていくことが研究で判明しています(※2)。だから年とともに減少する脳のオメガ3を魚から補うことで、逆に脳を大きくできるんですね。
ただし揚げた魚を食べていた場合、脳は大きくなりませんでした。この結果に研究者は「高温で調理すると魚のオメガ3が壊れてしまうため」とコメントしています。
週1回以上の魚摂取が加齢の認知機能低下を遅らせる
2005年の魚の消費量と認知症リスクの関係を調査した大規模研究(※3)があります。研究内容は以下のとおり。
- 参加者は65歳以上の高齢者6,158人
- 参加者を6年間調査し、魚の消費量と認知機能の関係を調べた
魚の消費量と認知機能低下の関係をまとめた表が↓です。
魚の消費量 | 1年あたり認知機能低下率(%) |
---|---|
週1回未満 | 5.4 |
週1回 | 4.86 |
週2回以上 | 4.698 |
65歳以上で魚をほとんど食べない場合は、知能が1年ごとに5.4%おとろえるのです。対して週1回以上魚を食事メニューに加えれば、認知機能の低下率を4.86%に、週2回以上なら4.698%に減らせます。
研究者によると魚摂取による認知機能低下を防ぐ効果は、年齢が3〜4歳若くなるのと同じだそうです。
魚を食べると脳が大きくなるから、当然認知症も予防できるってわけだね
魚の脂質EPA・DHAが心臓病リスク、全死亡リスクを下げる
脂質の一種であるオメガ3は、植物に含まれるαリノレン酸、魚に含まれるEPA・DHAにわかれます。
2006年のメタ分析(※4)で、過去20件の研究をもとに魚の消費量と心臓病・全死亡リスクの関係を調査しました。
メタ分析:同じテーマの複数研究を統計的に分析する信頼性の高い研究方法
このメタ分析では、EPA・DHAの多い魚(サバやイワシなど脂肪の多い青魚)を週1〜2皿食べると
- 心臓病リスクが有意に36%下がる
- 全死亡リスクが有意に17%下がる
という結果が出ています。
有意:結果が偶然による誤差ではなく、統計的に意味があること
また心臓病・死亡リスクを下げるには1日あたり250mgのEPA・DHAの摂取で十分だそう。
どんな魚にどれくらいのオメガ3(EPA・DHA)が含まれるかは 、以下の記事で書いています。
» 科学的に正しい脂質のとり方!健康のためにはオメガ3とオメガ6の比率が重要
魚の脂質オメガ3が炎症をおさえる(=老化防止)
魚はさまざまな病気や老化の最大原因である炎症をおさえます。炎症を防ぐ効果があるのも、魚の脂質オメガ3です。
過去いくつもの研究でも、オメガ3の抗炎症効果は実証済。オメガ3と炎症の関係を調査した研究には、たとえば以下があります。
上記どちらの研究もオメガ3が
- 体内の炎症物質をおさえる
- 心臓病や脳卒中、動脈硬化など、炎症が原因の病気を予防する
と結論づけています。
魚タンパク質で脂肪が減って筋肉が増える
2012年の研究(※7)で、魚のタンパク質による体への影響が調査されました。研究内容は以下のとおり。
- 参加者は34人の男女
- 期間は8週間
- 参加者をランダムに魚タンパク質群、プラシーボ群に分ける
- 魚タンパク質群:タラのタンパク質タブレットを前半4週間は1日3g、後半4週間は1日6gとる
- プラシーボ群:偽タブレットを魚タンパク質群と同じようにとる
- 実験開始前・4週間後・8週間後に体脂肪や筋肉量などの体格指標を測定
8週間後、魚タンパク質群は有意に
- 体脂肪1.6%減(プラシーボ群0.2%減)
- 筋肉0.8%増(プラシーボ群0.3%増)
という結果が得られたのです。研究期間中に参加者の運動量、食事内容はとくに変わっていなかったそう。
研究者はこの結果を「魚のタンパク質成分が他の食品と異なるため」と推測しています。
魚のビタミンDが睡眠の質を高め、日中活動レベルを上げる
2014年発表の、魚の摂取と睡眠・日常活動の関係を調査した研究(※8)があります。研究内容は以下のとおり。
- 実験期間は6ヶ月
- 参加者は21〜60歳の男性95名
- 参加者をランダムに魚群とコントロール群に分ける
- 魚群は週3回、1食150〜300gの養殖サーモンを食べる
- コントロール群はサーモンの代わりに鶏・豚・牛肉を食べる
- 実験前後で参加者の睡眠の質、日中活動レベル、体内のビタミンD量を測定
調査項目の測定方法は以下。
調査項目 | 測定方法 |
---|---|
睡眠の質 | スマートウォッチとアンケートの両方 |
日中活動レベル | アンケート |
ビタミンD | 血液検査 |
結果として、魚群はコントロール群に比べて有意に
- スマートウォッチ、アンケートの両方で睡眠の質が上がった
- 日中の活動レベルも高くなった
- 血中ビタミンDの値が最適値に近づいた(最適値:75nmol/L、魚群:71nmol/L、コントロール群:55nmol/L)
という好影響がありました。
上記の結果について研究者は「魚に含まれるビタミンDが睡眠の質を向上させ、日中の活動レベルUPにつながっている可能性がある」とコメントしています。
魚が視力低下や失明を予防する
視力低下や失明の主な原因の1つがAMD(加齢黄斑変性症)です。AMDは加齢で発症リスクが増えていきます。
2013年の研究(※9)によれば、日本人は50代でおよそ16%、70代でおよそ31%がAMDを発症するそう。しかし魚の摂取がこのAMD発症リスクを半減させることが研究で明らかになっています。
- 2011年の研究(※10)で医療従事者の女性38,022人を10年間調査。結果、週1皿以上魚を食べる人は月1皿以下の人と比べてAMD発症リスクが有意に42%低かった
- 2008年の研究(※11)で65歳以上の男女2,275人の魚摂取量とAMD発症率の関係を調査。結果、脂肪の多い魚(サバやイワシなど)を週1回以食べる人は週1回未満の人と比べてAMD発症リスクが有意に53%低かった
魚は科学的に肉より健康に良い
世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事
食品例 | 健康度 |
---|---|
魚、野菜、果物、玄米、全粒粉パン、オリーブオイル、ナッツ | 複数の信頼性が高い研究で健康に良いと示されている |
ダークチョコレート、コーヒー、納豆、ヨーグルト、酢、豆乳、お茶 | 少数の研究で健康に良いと示されている |
その他(鶏肉もここ) | 健康へのメリットもデメリットも示されていない |
マヨネーズ、マーガリン | 少数の研究で健康に悪いと示されている |
牛肉、豚肉、加工肉(ハムやソーセージなど)、白ごはん、パン、じゃがいも、バター | 複数の信頼性が高い研究で健康に悪いと示されていている |
上記の分類で魚と肉を見ると
- 魚は最も健康に良い
- 鶏肉は健康に良くも悪くもない
- 牛・豚肉は最も健康に悪い
とわかりますね。
魚は水銀のデメリットより健康メリットの方が大きい
研究や厚生労働省は、魚は水銀のデメリットよりも健康メリットの方が大きいと結論づけています。クジラやマグロなどの水銀濃度が高い大型魚を食べすぎなければ、水銀の健康被害は気にしなくてOKです。
魚の水銀問題については、以下の記事で解説しています。どんな魚をどのくらいまで食べていいのかが正確にわかりますよ。
» 魚の水銀って大丈夫?科学的に徹底解説!身近な魚介水銀量ランキング付
サプリより本物の魚を食べるべき
オメガ3(EPA・DHA)やフィッシュオイルのサプリはよく売られていますが、正直おすすめできません。魚のサプリをやめた方がいい理由は以下の3つです。
- 研究ではオメガ3サプリに明確な健康効果なし
- ほとんどのオメガ3サプリは低品質で健康に有害
- 魚はオメガ3以外もさまざまな栄養を含む
魚油サプリをおすすめしない理由の詳細は、以下の記事で解説しています。
» オメガ3サプリに健康効果なし?サプリではなく魚を食べるべき3つの理由
最強の健康フード魚を食べよう
魚の健康知識についてまとめます。
- 週1回以上の魚摂取で脳の記憶・認知機能エリアが大きくなる
- 週1回以上の魚摂取が加齢の認知機能低下を遅らせる
- EPA・DHA(オメガ3)が多い魚を週1〜2回食べると、心臓病リスク36%減、全死亡リスク17%減
- 魚のオメガ3が炎症をおさえて老化防止に役立つ
- 1日あたり3〜6gの魚タンパク質をとると、脂肪が減り筋肉が増える
- 魚のビタミンDで睡眠の質が上がり、日中元気になる
- 週1回以上の魚摂取で、加齢による視力低下や失明の主な原因であるAMD発症リスクが半減する
他にも
- 科学的に魚は肉より健康に良いと証明済
- 魚は水銀デメリットより健康メリットの方が大きい
- 魚のサプリは体に良いどころか、むしろ健康被害を起こすかも
というお話をしました。
この記事で魚(とくに脂肪が多いサバやイワシなどの青魚)を食べることが、どれほど健康に役立つか伝わったはずです。ぜひ食事に積極的に魚をとり入れましょう!
値段と調理の手間を考えると、サバ・イワシを水だけで煮て密閉し、劣化をおさえてくれる水煮缶が健康的にベスト。ぼくは毎日1缶ずつ交互に以下のサバ缶
まとめ買いをした方がお得なので、↑の24缶セットがオススメ。もちろんもっと少ない単位
ぼくが上記のサバ缶・イワシ缶を選んでいる理由は以下の記事で解説しています。
(後日公開予定)