寒い季節は布団から出るのがおっくうになり、外に出るのも気が乗らず行動力が落ちてしまう人も多いのではないでしょうか。
でも寒さには、
- 老化や病気をおさえる
- 睡眠の質を上げる
- 痩せやすい体になる
という素晴らしい健康メリットがあるのです。
今回は6つの研究をもとに、寒さが体をより元気にする理由を4つ紹介します。
今後は「さむっ…!」と思っても「体が健康になっている!!」と、ポジティブな気分になれること間違いなし。
寒さを生活にとり入れると体調が良くなり、さらに衣類・暖房代も節約できるかもしれませんよ。
寒さの科学的な健康メリット4つ
科学的に実証されている寒さの健康メリットは以下の4つです。
- 体内で老化をおさえる2種類の物質が増える
- 免疫機能が活性化して病気になりにくくなる
- 睡眠の質が上がる
- 褐色脂肪細胞が増えて痩せやすい体になる
順に解説します。
体内で老化をおさえる2種類の物質が増える
寒い環境ではアディポネクチン、グルタチオンという老化防止に有効な2つの物質が体内で増えると研究で判明しています。
長生きホルモン「アディポネクチン」
アディポネクチンは脂肪細胞から分泌されるホルモンで、以下のはたらきがあります。
- 糖化予防:血糖値の上昇をおさえるインスリンのはたらきを高める※
- 肥満予防:脂肪を燃焼してエネルギーに変える
- 高血圧予防:血管を広げて血流を増加させる
- 動脈硬化予防:傷ついた血管を修復する
※糖化が何なのかを知りたい方は、糖化について解説した記事を読んでください
アディポネクチンには上記の作用があり、長生きな人ほど量が多いため長寿ホルモンと呼ばれています。
このアディポネクチンは寒い環境で増えるのです。具体的には2009年の研究(※1)で、10℃の部屋に2時間いた6人の健康な男性は、体内のアディポネクチン濃度が70%増えました。
10℃は関東で11月中旬〜12月頭くらいの寒さ。じっとしていると寒いけど、動けばそれほど気にならない温度です。
抗酸化物質「グルタチオン」
抗酸化物質は病気や老化の原因である酸化ストレスをおさえるために重要です。
1994年の研究(※2)で、抗酸化物質の1種であるグルタチオンが寒さの刺激によって増えると判明しています。研究では寒中水泳選手10人の体内のグルタチオン濃度を、その他の人と比べました。
結果、寒中水泳選手のグルタチオン濃度は寒中水泳をしない人に比べて有意に高かったのです。
有意:結果が偶然による誤差ではなく、統計的に意味があること
寒中水泳選手のグルタチオン濃度が高い理由について、研究者はこうコメントしています。
人体は自然環境の熱刺激にさらされると、病気などのストレスに対する耐性が高まる。寒中水泳選手のグルタチオン濃度が高いのは、この自然刺激への適応メカニズムによるものだろう
Uric acid and glutathione levels during short-term whole body cold exposure
免疫機能が活性化して病気になりにくくなる
1996年の研究(※3)で、寒さによって人の免疫機能が活性化すると判明しています。研究内容は以下のとおり。
- 参加者は陸上選手の男性7人
- 参加者は6週間、週3回14℃の冷水に1時間つかる
- 6週間後、参加者の免疫物質の増加量を調査
結果、ヘルパーT細胞をはじめとする6種類の免疫物質が増加し、α1-アンチトリプシンという炎症物質が減少したのです。
炎症が体に悪い理由を知りたい方は、慢性炎症について解説した記事が参考になります
免疫物質が増えた理由は、冷水の適度なストレスで免疫系が活性化されたため(ホルミシス効果)と考えられています。
他にも毎朝30秒の冷水シャワーで病気になる人の割合が29%減るという研究(※4)もあり、寒さが免疫力を高めるのは間違いなさそうです。
睡眠の質が上がる
「SLEEP 最高の脳と身体をつくる睡眠の技術
それは温度変化が人の睡眠を調節する大きな要因だから。温度による睡眠への影響は光よりも大きいのです。
気温が明るさよりも睡眠に影響する事実は2015年の研究(※5)で明らかになりました。この研究で調査したのは、現代でも狩猟採集生活をおくり、気候の異なる地域に住む3つの部族。
3つの部族の睡眠を調査した研究では、以下の睡眠が光よりも気温から影響を受けている証拠が見つかったのです。
- それぞれの部族は日没時に睡眠を開始せず、気温が低下し始めるタイミングで入眠していた
- それぞれの部族は気温が最も低くなるタイミングで目覚めた
- サン族とチマネ族は日照時間がほぼ同じ(13時間:12.9時間)地域に住んでいる。にもわらずサン族はチマネ族より2.4時間遅く起床した。これはサン族の地域のみ朝の気温が平均6℃とかなり低く、最低気温になる時刻が遅いためと考えられる
研究者はエネルギー消費をおさえるために気温で睡眠リズムが決まるのではと考察しています。
低い気温で活動すると、体を温めるためのエネルギー消費がより大きくなりますよね。対して高い気温で寝ようとすれば、体温を下げるために体はより多くの熱を放出しなければなりません。
睡眠のリズムは光ではなく気温で決まる。睡眠に快適な室温は少し寒いくらいの15.5℃〜20℃
褐色脂肪細胞が増えて痩せやすい体になる
褐色脂肪細胞とは脂肪を分解して熱をつくる細胞です。体を温めるための細胞なので、寒い環境ほど増えます。
2014年の研究(※6)では、5人の健康な男性に1ヶ月間19℃の部屋を寝室として使ってもらいました。すると褐色脂肪細胞が2倍になったのです。
そして室温27℃の暖かい部屋で1ヶ月寝ると褐色脂肪細胞は減ったそう。
寒さを活用して健康になろう
寒さの健康メリットをまとめます。
- 長生きホルモンのアディポネクチン、抗酸化物質のグルタチオンが増えて老化をおさえる
- 免疫システムが活性化して病気になりにくくなる
- 人の睡眠リズムは光より温度で調節される。具体的には15.5〜20℃が睡眠にベストな室温
- 脂肪を燃やす褐色脂肪細胞が増え、痩せやすくなる
寒さって辛いしテンションは下がるし、あまり良いイメージがないですよね。でもこの記事で寒さがいかに健康に良いか伝わったはず。
次に寒いと思ったときは、
「老化をおさえてるぞ!」
「体が強くなって病原菌も撃退!」
「脂肪もガンガン燃えてカッコ良くなってる!」
と、ポジティブな気持ちになれること間違いなしです。